「あのクラス、荒れてるのよね」というように、学校の中で「荒れ」ということばを耳にすることがあります。そもそも、「荒れ」とはどういう状態のことなのでしょう?
AERAwithKids春号では、最近の小学校事情に詳しい白梅学園大学教授の増田修治先生にお話を聞きました。
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「授業を聞かずに教室から出てしまう、授業を妨害する、友だちや先生に対して暴力や暴言を繰り返す……このような児童がクラスで1割を超えると『学級崩壊』、つまり『学級が集団教育の機能を果たせなくなってしまう状態』になるのです」(増田先生)
これがいわゆる「荒れ」の状態だといいます。増田先生は、28年間の小学校教員生活を経て、現在は荒れが見られる全国の小学校におもむき、実際にクラスで授業を行うなど、何カ月もかけて改善に取り組む活動も行っています。
「気になるのは、ここ約10年の間に1年生の荒れが約14倍と急速に増えているということです」
このような低学年の荒れの原因には、子どもの根底に「かまってほしい」という気持ちがあるのが特徴と増田先生は話します。
「たとえば、授業中におしゃべりやいたずらをした児童に、先生が注意をしますね。すると、『先生はあの子ばかり見ている』と、先生の目を引くためにわざと自分も悪さをしたり、わがままを言ったりするのです。これが連鎖してしまうと、学級崩壊へつながることもあるのです」
これは、感情を上手に処理できない、いわゆるキレやすい子どもが増えているのも大きな原因。感情を上手に処理できないから、行動に訴えてしまう。今の子どもたちは、塾や習い事で毎日フル回転しています。親からはなんとかこなしているように見えても、その心の中は大人が思う以上に複雑なのです。
「親は、子どもにどうしても『いい子』であることを求めます。いつも明るく、やさしく、元気な子ども像ですね。でも、子どもだって感情をもった立派な人間なのです。好きなものを取られたら怒るし、不快感で泣くことだってあるのです。でも、そんなときに『そんなに怒らないの』『泣くんじゃありません』と、気持ちを受け止めずに理想ばかり押しつ続けていたら……子どもの深い感情の処理能力は高まりませんよね」
ポジティブとネガティブ、子どもの両方の気持ちを親がきちんとその都度受け止めてあげることで、はじめて子どもは感情を上手に表現することができるようになるのです。
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もし、実際にわが子のクラスが荒れてしまったら……。そんなとき、つい親がやってしまうのが、「先生が悪い」「騒ぎを起こした◯◯くんが悪い」と、「誰かのせい」にすることです。
「先生のスキルや経験にもばらつきがあります。ですから、『先生のやり方が悪い』と考えたくなる気持ちもよくわかります。でも、そこで先生を責めたてるだけではなにも解決しません。まずは『自分の子どもはどうあってほしいか』を考えてほしいのです」
まず、誰よりも先生が必死に努力しているということを知っておきましょう。そのうえで、親が協力できることを先生に相談するのはとても有意義なことです。
「私にも経験がありますが、保護者と先生が協力して、教育観をすり合わせ、冷静に解決法を考えることで、問題を解決できたケースがたくさんありました」
他人の責任ばかり問うのではなく、保護者から「なにか協力できることはありませんか?」と申し出れば、先生も心強く感じるはず。「どうしたら解決できるか」と考えている親は、ほかにもいるはずです。同じ思いのママ友と連れ立って行くのもいいでしょう。
また、クラスの「荒れ」には、「あの子もやっているから、僕もやっていい」といった、他者への規範意識の低さも大きく関係していると増田先生は指摘します。
「これには、日ごろから、家庭で『あの子が悪い』『あの先生が悪い』といった他責的な親のことばを耳にしていることもかなり影響しています」
親の何気ない言葉を、子どもはよく聞いています。それを聞いて子どもがどう感じているか、どう動くか。大人は心しておきたいものです。
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