3月に現役を引退したイチロー氏(46)=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター=が22日、故郷の愛知・豊山町で自身が大会会長を務める「イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式に出席した。野球少年たちの質問に答えるなど約20分間も熱弁をふるった。今月中旬に学生野球資格回復に必要な研修会を受講して以来、初の公の場で、指導者としての活動にも言及した。引退により、オリックス時代の1996年から続いた同大会は24回目の今回で終了。関係者によると、同氏が関わる行事は今後、開催の予定がないという。
▽最後のメッセージ
皆さん、こんにちは。イチローです。毎年ここで、その年のシーズンで感じたことをみんなの前でお伝えしてきたんですが、今回これが最後のイチロー杯でのメッセージとなります。
この春、現役を引退しました。その時にイチロー杯のことが真っ先に頭に浮かんで、これからどうしようかなと考えました。これまでシーズンで感じたことをメッセージとして残してきたんですけども、それができなくなるということで、この決断に至りました。日本で9年、米国で19年プロ野球選手として過ごして、最後に何か伝えられないかと考えて、今ここに来ました。
▽自分で鍛えて
2点あります。先日、学生野球の資格回復の研修を受けてきました。合否に関しては2月に明らかになります。ただ、もし可能になるのであれば、みんなとまた違う場所で会うことができるかもしれない。だからなるべくみんなに野球を続けてほしいと思っています。
今みんなは学校で先生にいろいろ教えてもらっていると思うけれども、教える側の立場の人間、先生たちはなかなか難しいらしいです。生徒の方が力関係で強くなっている状況があるようで、僕は心配というか、どうやって教育するんだろうと考えることがあります。中学、高校、大学と社会人になる前に経験する時間、そこで自分自身を自分で鍛えてほしい。厳しく教えることが難しい時代に誰が教育をするのか。最終的には自分で自分を教育しなければいけない時代が来たのだと思います。
▽体験して感じて
もう1点。これも時代だと思いますけど、調べればいろいろなものが分かる時代になった。世界が小さくなったように思えるけど、僕が28歳で米国に渡って大リーグに挑戦し、調べれば知識として分かることであっても、外に出て初めて分かることがたくさんあった。傷つくこともあるし、楽しいことだってある。
ただ知識として持っているのではなく、体験して感じてほしい。そういう経験を将来みんなにしてほしい。あって当たり前のものは、決して当たり前ではないと気付く、価値観が変わる出来事をみんなに体験してほしい。これはいつものシーズンのメッセージとは違うメッセージですけど、28年のプロ野球生活を終えて僕が強く感じていることなので、ぜひみんなに覚えておいてほしいと思います。
(質問コーナー)
▽指導に意欲
―今後どこでイチロー氏の指導を受けられるか?
「僕が特定の学校に常勤している状態にならなければ、もし『お願いします』と言われればどこにでも行くことができる。『あの時、質問した僕です』と言ってくれれば、『あっ!』となる。ただちゃんとそのときに野球を続けていないと。それが指導できる条件です」
▽王さんを嫌う人はいない
―イチロー氏にとってのスーパースターは?
「子供の頃はドラゴンズの選手。人間として憧れる野球界の先輩は(第1回WBCで戦った)王貞治監督(ソフトバンク会長)。王監督に会った人たちはみんな好きになる。僕に会った人は嫌いになる人もいる(笑い)。王監督を嫌いな人は誰もいない。真っ先に思い浮かぶのは王監督だね」