2009年6月2日(火)17時51分配信 ナショナルジオグラフィック
虫歯の治療風景(2006年11月撮影)。最新の研究によると、消化の際に生成される胆汁から、まったく新しい歯の詰め物を作ることができるという。実現すれば現在の虫歯治療で利用されている水銀などの毒性化学物質は必要なくなるかもしれない。Photograph by John Giles/AP
甘い物好きで虫歯に悩む人も多いだろう。最新の研究によると、近い将来、胆汁から作られた無毒の詰め物で歯の治療ができるようになるかもしれないという。
現代の虫歯治療における歯の詰め物には、水銀か、ポリカーボネート樹脂の原料として使用されるビスフェノールAという化合物が使われている。どちらの物質も詰め物の強度を増す働きがあるが、人間や環境にとって毒となる恐れがある。
今回発表された新しい詰め物素材では、このような毒性成分の代わりに胆汁酸が用いられている。胆汁酸とは、肝臓でコレステロールが分解される際に作り出される胆汁成分である。胆嚢(たんのう)に蓄積され、脂肪分の多い食事を消化するときに放出される。
研究チームの一員でカナダにあるモントリオール大学の化学者ジュリアン・チュー氏は、「胆汁酸に化学添加材を混ぜて青色光にさらすと強固な合成樹脂が生まれる。虫歯治療用の詰め物として最適だ」と話す。青色光の波長は適度な熱を生み出し、各成分を傷つけることなく化学反応を誘発するという。
チュー氏の研究チームは、もともとは胆汁と添加材の合成物からヒドロゲル(水を含むゲル)を開発して、組織修復や薬物送達(ドラッグデリバリー)など、生物医学的な用途に利用できないかと考えていた。しかし、いざ物質ができあがってみると、あまりに硬くて当初の目的には使えないことがわかった。
「なんとか軟らかくしようとさまざまな物質を投入してみたが、どうしてもうまくいかなかった。その時ひらめいたんだ。硬さを生かして虫歯の詰め物に使えば良いじゃないかってね」とチュー氏は話す。
予備テストの段階で、胆汁酸の詰め物が従来の詰め物と比べてほぼ同等の耐久性を持ち、さらにひび割れに強いことが判明している。また、胆汁酸は人体内部に自然に存在する物質であるため、安全性も完全に確保できると考えられている。
「分解して崩れることがあっても、体の一部として吸収される」とチュー氏は話す。
「ヒトの胆汁酸はブタやウシなど多くの動物のものと化学的に同一なため、材料は農家から安価で安定的な供給が受けられる。動物の消化を助ける成分を歯の詰め物に使うと聞くと、吐き気をもよおす人もいるかもしれない。しかし、数々の利点を考えれば胆汁酸の詰め物の優位は動かないだろう。水銀を含む物質を体の中に取り込みたいと思う人はいないだろう。最終的にはその一部が重要な臓器にたどり着くことがあるのだから。胆汁酸は天然の化合物であり、常に私たちの体内に存在している」。
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